地獄編〜63  この男奇人・「臨床教授になる資格を改善・厳格にせよ」。③(40)

「ひとは身をもって体験しないと本当のことは理解出来ない」。
B29の焼夷弾で焼き殺された人。原子爆弾で殺された人。沖縄戦で殺された人(火炎放射器・艦砲射撃・市街戦・空爆・強制自害・・・)。南方諸島で病死・餓死した将兵。ロスケに凌辱され自死した婦人・・・皆みんな死人に口なし。どんなに想像力を総動員しても彼らの苦痛・苦悩なんて本当のことはまるで解らない。しかも今や皆知らん顔!!。
九  「三人寄れば文殊の知恵」。無論これには条件が付く。三人それぞれ知恵者でなければならぬ。アホ・バカ・マヌケ三人じゃ話にならぬ。未消化で即戦力にはならぬが教科書的「知識」だけなら国家試験受験前後の学生が一番豊富。全科にわたってゴチャゴチャであっても頭の中にギッシリ知識は詰まってる。故に症例検討会は成り立つ。医者として初めて患者を診る。最も診断困難だった病名は「風邪」だった。病歴を聴いてるとワイワイ病名が浮かび出る。鑑別診断の道を遠回り。経験不足で思考回路が未成熟!!。
一方医師免許取得後 二十数年以上「専ら研究?」(殆んどの場合時間と労力の無駄)にのみ従事。病人なんて診たこと無い新任教授は無知無能の臨床医?!。トピックの薬品なんてまるで知る由もない。高血圧にはエガリン 抗菌薬はダイアジン(サルファ剤)とペニシリン それと病院約束処方の胃薬だけ。こんな藪医者が教授の肩書だけで新来患者の初診医。患者再来日に 若手医局員が病歴を取り直し 診断・治療の方針を立てる。まさかの話ではない。実話だ。内科の場合救急患者でない限り当座を誤魔化し?過ぎて行ける。
外科に東京大学から若手教授が着任。秀才の噂。心臓血管・胸部外科が専門?。消化管外科もやる?。奇人こいつまでも未熟者とは気付かなかった。内科外来看護婦の従兄(十二指腸潰瘍・手術は容易)をこいつに紹介。今でも覚えてる。この看護婦に「若い教授だけどいい?」とわざわざ了解をとった。まさかの手術死。奇人の立つ瀬無し。外科病棟の看護婦も胸部手術死。彼女の「幽霊」を三人のナースが同時に見て有名になった。手術中血が出るわ 出すわ滅茶苦茶。空の輸血瓶(200ml)があと2〜3個で百本目。ホントに仰天した。未熟外科医は度し難し。教授の虚構権威がなせる犯罪行為。
十  教授回診時の伝統?。ナースら緊張・総出で病棟掃除。病棟婦長が教授お迎え参上。教授なんて一介の公務員。何故こんなに持ち上げる? へりくだる?。一人ひとりの患者のベッドの上に温度板・カルテ・レントゲン写真などが置かれてる。温度板には患者の病名 体温 脈拍数 排尿量・回数 注射薬の種類・量 内服処方の内容等が一目瞭然解るように書かれてる。
 他方看護婦への「指示簿」は別。これを悪用?インチキをやりだした(奇人はやらず)。教授の指示がペニシリンでも 主治医は無視。別の注射用抗生剤投与を指示・実行。教授の内服指示がダイアジンでも 他の抗生剤を処方箋に書く。教授を完全無視。悉く患者にには幸せな事になった。このダイアジンは当時すでに過去の物。薬局長は困惑しきり。「22年後」!!宗教関係の大病院長に転職。ここで又 ダイアジンを処方箋に書き 製薬会社・薬品卸ら業界関係者の顰蹙・嘲笑を買った。一般開業医にまで噂が広まった。