地獄編〜15  死にたい人の邪魔するな・・・・・・(前篇の訂正〜 誤・七十歳  正・七十)  

 医者には「医者の常識」がある。実はこの「常識」がとてつもなく邪魔をする。常識は その時 場所によって違う。
 日本・チョンマゲ これ昔常識今はせず。 西洋・チョンマゲ 見たこと無し。
 これと同じ。
自殺目的でブロバリン。救急車。内科外来 即「胃洗浄」。無駄と知っててやる 常識だから。特に大学病院当直時はやる。恰好を付ける。

◎ 大学病院内科当直。
 夜 十分おきに三台救急車。三人とも女 ブロバリン
しょうがない。次々胃洗浄。これが むかむかする程臭い 汚い 嫌がる未遂者もいる。有無を言わさず太い管を口から胃の中へ突っ込み 胃の中を水で洗う。死にたくて飲んだのに無理やり洗い出す。医者も看護婦もゴム手袋・マスク姿の肉屋スタイル。外来担当の看護婦も辟易。健康保険使えず 自費払い 高くつく。待ち合い・廊下は家族同士で大喧嘩。
空床無し。
自宅に帰す。決まって翌朝覚醒する。電話でわかる。
 
◎ アルバイト当直先の病院。
 胃洗浄はしない。入院 酸素 点滴注射。寝かせておいて終わり。翌朝みんな目が覚める。殆どみんなパフォーマンス。
◎ 自分の救急病院でも胃洗浄せず。人の「死に路」を邪魔しない。死にたい人に要らんことするな。心に決めていた。
 ここ2〜3年 胃洗浄は無駄 やらない・・・が常識。
 内服薬の種類・量 内服後の経過時間 麻酔の深度を判定出来きれば 胃洗浄が必要か否か直ぐ判る。

 去年も自殺者総数は 神奈川県・箱根町の全町民が 一年間に二度死ぬ数に近い。
自殺を断念させた 或いは医者が自殺の邪魔をした その後の人生をどう保証する? 可能か?
 そもそも 「自殺は悪である」 こんな風潮が何故現れた?これが解らない。
あなたなら どうする?
 「世の中に寝る程楽は無きものを 浮世の馬鹿は起きて働く」
 ・・・「世の中に死ぬほど楽は無きものを 浮世の馬鹿は生きて働く」・・・どうなさいます?
よく言う。
 「人の命って 呆気ないもんですね」・・・あれやこれや考えてみる。これ 良い事じゃありませんか?