地獄編〜24  この男慣れる・表六・変人・奇人⑤

 案の定 昨夜は十時就床 60分〜90分毎に覚醒・・・

 ◎ 大講堂の中・・・何が辛いって・・・食べるものが無かった。これに尽きる。みんな同じ。気が立つ・・・書けない。想像にお任せする。妙に覚えてるのは 小豆のスープ?・・・五右衛門風呂?に小豆を少々 水をドーッと加えて炊く。一人一人に公平に配る。お椀に沈んだ豆の数を勘定出来た。これで一食。もうひとつ 大きな球形の大根(桜島大根?)を丸ごと生でムシャクシャ食べた。美味しくて取敢えず腹はふくれた。ほんとに何を食べて生きて来たのか 今は全く思いつかない。不思議なものでお米のご飯!これだけを腹いっぱい食べたい!その夢をみる。スイギョーザ・トンカツ・スキヤキ・スシ・キャラメル・チョコレート・卵かけご飯・・・「御馳走?」なんて頭の片隅にも出て来なかった。
 ◎ 何があっても手を出すな!!喧嘩はするな!!殴られても抵抗するな!!盗むな!!・・・連帯責任をとらされ こっ酷い目に遭うぞ!!
 ◎ 便所・・・この建物の玄関と真反対の位置に 本来の便所があったが数人分用。数不足!!。急遽正面玄関の左側に用便所を新設。一度に十人くらい使用可能?。それも肥溜めの上に 厚い板を一枚づつ一尺間隔位づつあけて置いたような物。左右の板の上にまたがり用を足す。左右の仕切りはムシロ一枚。丁度 和式便所に跨った時 足は板の上 便は真っすぐ肥溜めに落ちる。そんな仕掛けだ。
 ここで悲劇が起った。或る日の午後 ロスケの兵士ひとり乱入。いきなり自動小銃ををバリバリっと空に向けてぶっ放した。偶々用便中だった老婆が驚き腰を抜かして肥溜めの中に墜落・脚骨折・死亡した。
 ここで敢えて付記しておく。ロスケは油まみれで汚かった。臭かった。日本人から略奪した腕時計を両前腕に何個も蒔きつけ得意満面。 万年筆はポケットのあちこちにつけハラショー。 女は日本女性の赤い腰巻をマフラーのように頭からすっぽり被っている始末。時計が動かないと言っては怒る。何のことは無い ネジの巻き方を知らなかった。こんな奴らだから婦女暴行・強奪・虐殺なんて朝飯前の平気の平左。とんでもない野蛮人だった。北満の邦人の悲惨・悲劇は想像を絶して余りある。仕事柄北満からの引揚・女性の方を診察する機会は随分あったが 引揚過程について語ってくれた人に未だに遭遇していない。
彼女らは断じて口を割らない。
 ◎ 風呂はどんなだったか 全く記憶にない。
 ◎ ヒョウロクも治安署?保安署?・・・名称を忘れた。ボーイとして駆り出された。「コヨリ」を作れ!俺は日本人にさんざんやらされた!殴られた!!
   ナガサキでカタキをとられた。しつこかった。
・・・まだ平壌を出られない?!・・・。
 この時期 百姓・農業に憧れたらしい。
 第一に食い物 第二が病気に立ち向かう・・・だったように思う。