地獄編〜33  この男戸惑う・怒る・頑固・変人・奇人(14)  

 駅に降りた。汚かった。人がウヨウヨ・ゴミゴミしてた。うす暗く太陽が無い。飴など菓子類を売る店。和服で身をかためた細身のオバサンを見た。客に何やら渡してた。叔母だった。
オンボロ電車に乗り換え。竹林の奥に身を隠すように佇んだ平屋だった。
 父は生真面だけが取り柄のような男。実直・小心者。共同生活もまだ日の浅い或る日 温和な父が猛烈に怒りだした。叔母を罵倒し蹴飛ばす始末。初めて見た。母をあたかも「オサンドン」の如く扱う叔母を 偶々見かけたのが原因だった。完全決裂!!。
 新京でも 我が家に居候してた父の甥の傍若無人に激怒したことがあった。「出て行けっ!」。間に入って懸命に執り成したのが母だった。この甥が例の「クズ芋」事件の帳本人。この件についても父は母から何も聞いていない筈。
 父方の親戚はろくでなしばかり・・・ガンコは心に誓った。こいつ等を今後「ドジン・土人・内地土人」と呼ぶ。一切付き合わないっ!!
母も父も直ちに動き始めた。一人の知人も居ない村落。有明に帰るに帰れぬ母。必死に訴える母を救ってくださったのは 旧・村長夫妻だった。
 「今は使っていない蚕室の二階で良ければ・・・」。ガンコはこの時の条件等については一切聞いてない 知らない。母は家長・父に全てを委ねた。子供・ガンコに出る幕なんぞある訳が無かった。
 母 またまた小学校・転入申込。帰宅後「この学校は程度が低い 間違いない!」・・・。
 ガンコ登校・・・「有明の二つの小学校より遥かにレベルが低い」。つまらない。退屈だ。
 母 「学校に行く必要無しっ!!」「直ぐに中学生だっ!!」。「小学校卒業」の記憶全く無く 小学校卒業証書をガンコは見た事がない。
 加えて「・・・でさぁ」「・・・じゃぁーん」「・・・でよう」。九州では完全に有明の方言。余りの違いに驚いた。
 因みに 新京では見事に奇麗な標準語だった。
 今 テレビで喋ってる「女子アナ」なんて 小僧・ガンコの足元にも及ばない。ガンコは密かに自負している。キチンとした日本語だった。