地獄編〜35  この男と蚕室生活・ガンコ・変人・奇人(16)

 頭痛も分娩も人との付き合いも 何ごとも体験しないと身に沁みて感じる 判る事は無い。
ガンコが「蚕室」に住んで約六年間・・・
 ☆ 食糧入手極めて困難。この農家から購入した覚えが無い。モヤシ・大根・ワカメ・タケノコ・季節の野菜入りの雑炊 団子汁が主な食事だった。弁当持参はしばしば困難だった。コメも麦もなかった。
 ☆ 便所が無い。便所は離れた屋外にひとつのみ。「クミトリオケ?」と言っていたが ひょっとして「下肥桶」だった?を階下に置いていただいた。
 ☆ 台所が無い。出入り口から5メートル外のモチノキにトタン屋根を付けた。ここにカマド?を置いた。
 ☆ 井戸は出入り口から30メーター強離れてる。
 ☆ 薪が無い。近くの雑木林から枯れた落ち葉をかき集めて来る。
 ☆ 風呂が無い。畑仕事を手伝って夕食と入浴をいただいた。
 ☆ 階下がガランドウ。冬はすごく冷え込む。
 ☆ 農家のお手伝い・・・
   田をうなう。畑をうなう。草むしり。ジャガイモの手掘り。サツマイモのツル刈りと掘り出した芋を集めて運び出す。田植え・稲刈りの手伝い。落花生の収穫手伝い。堆肥作りの手伝い。タケノコ掘りの手伝い。一里強離れた雑木林でクヌギ・ナラ・クリなどを伐り取り リヤカーで運び出し 庭で尺二寸の長さにノコギリ・ナタで切り分け 炭焼き釜へ運ぶetc etc etc・・・。
 ☆ ラジオ無し 約一年間?。どなたか忘却。標準型?ラジオをくださった。
 ☆ 大家の番犬。まさに狂犬。他人を絶対寄せ付けない。誰彼かまわず牙を剥いて吠えたてる。家族が制止しても不服従。躾け・教育全くなしのバカ犬。この犬はいつも味噌汁入りの米飯を食べていた。
   三毛猫は ガンコが庭に入ると必ず尻尾を立てて迎えに出て来た。
母が農業手伝い出来たのは初めの半年くらい。PTA会合・中学卒業式にも出席出来なかった。肺を侵されていた。ガンコ答辞を読んだ。