地獄編〜36  この男・中学時代の思い出・ガンコ・変人・奇人(17)

 ◎ 二年生・二学期から隣村の中学校と合併。新築木造二階建て一棟。一学年5クラス 計250人強。「体育」は運動場の整備・モッコ担ぎ。
 ◎ 数学と国語にまともな教師一人ずつ。他はほぼ全滅と評価しておく。
 ◎ 腹が立ったのは音楽。真面目な女性教師。NHKラジオ「堀内敬三の音楽の泉」を聴いて感想文を出せ。ラジオはあった。
日曜日は晴れたら大抵百姓仕事。これだけならなんとか許せる。気に食わないのは音楽を聴いて「感じたことを文章にせよ」。これだ。聴いた音楽を「文章」にしてしまったら「ハイ それまでよ」。ガンコはこう考えた。断じてレポートは出さなかった。
 ◎ NHKラジオ・英会話。「カムカム エブリバディ・・・」。あのテーマソング!妙に明るく軽い感じのあの調子。無性に腹が立った。母が病に斃れ臥してる時に 程度の低いエイゴが響く。「なんだこの野郎!」と何回思ったか!即 スイッチを切った。
 病院の場合 産科で「お坊ちゃんです!おめでとうございます」 一方でその同じ瞬間に「ご臨終で御座います」。これと相似関係!。
 ◎ 選択科目だったが実質は必修だった「農業」。この教師 百姓のムスコを依怙贔屓。不良をさらに不良化させていた。ゴロツキ如き奴だった。或る日 校舎裏の雑草地の草刈り。百姓の小僧共には楽な作業をさせ お勉強の出来る生徒達に足場の悪い急坂の仕事を強制。いきなり左下腿を噛みつかれた。カマキリだった。胴体を引っ張ったら首から千切れ 歯が我が皮膚に食いこんでいた。以来我が視界にカマキリが入ったら最後 虐殺の憂き目に遭うことになっている。
 カマキリとヘビをガンコは目の敵にしている。後者は父の長兄の村を思い出させるからである。
 ◎ 「商業」は教師がマヌケ。「家庭科」を選択した。
 ◎ 雪の日はほんとに困った。長靴はない。高歯じゃ転ぶ・・・。足は恐ろしく冷たい。傘が無く雨も実にいやだった・・・。
 ◎ 運動会も嫌だった。何故走るのか・・・解らない。いつも走っているのに・・・と言う訳。それに弁当の米が無い。一度麦飯だけだったのを思い出す。
 ◎ 百姓のなり損ない?しばしば「人夫」と言われた。今に見てろっ!ガンコの口癖になった。
 ◎ 図工の時間。教師は今の東京芸大卒。ガンコは完全我流 水彩画用絵の具で油絵如き絵を描く。九州・有明の郡ではガンコの絵は毎回入賞してパレット・絵の具・画用紙などせしめていた。ところがこの教師大声で「こんな物は絵ではない。絵とは言わないっ!」。ガンコ怒り心頭。その後ただの一度も絵を描いた事は無い。
 ◎ 英語・国語・数学・理科など一般科目は試験範囲が決まっていてどうという事はない。過去に習ったことを復習しさえすれば満点の事が多かった。
ガンコの母は試験の点数なんてゴチャゴチャ言った事は一度もない。何時も「よし よし」で終わりだった。
 叱りつける時の母は 正直ホントに恐ろしかった。人様は「本当にご自分のお子さんなのかしら」と噂してたそうである。
ガンコに母は言った。「叱ったらその後すぐ 思いっきり抱きしめ褒めてやる!!」。そして一緒に泣く!!。