地獄編〜53  この男奇人・香港の友人・インターン・医師国家試験・ECFMG試験(32)

 医学部卒業記念アルバム作り・謝恩会開催の準備・インターン生二人一組の仕分けを事務当局と打ち合わせ・・・取り仕切った。
 卒業に際し教務部長が 香港からの留学生に対する卒業証書は「正式の物ではない」と発言・・・?。怒り心頭の奇人は医学部長(解剖学教授)に直談判。教務の誤りを確認。同時に四月からのインターン・シップは彼とタッグを組む事にした。当時のインターン制度は実質的には機能していなかった。
 春の医師国家試験・受験準備の為「一緒に勉強してくれないか」。奇人即受けて立った。暮れから?彼の下宿するアパートに籠り 過去の国家試験問題集を徹底分析。英語の医学教科書を使って解説しあう。口頭試問は日本語が不調なら英語で説明するよう強く指示した。過去に留学生が一発で国家試験に合格した例を知らず奇人も必死だった。国家試験受験二週間後 アメリカ臨床目的留学に必要なECFMG[Educational Council for Foreign Medical Graduates]試験を東京の全国町村会館で受験。どの試験にも常にふたりは同道した。
この間しばしばマドンナが何かと差し入れしてくれた。
 奇人は彼から医師免許証受領の為の委任状と印鑑を預かり 彼は直ちに日本を離れ香港へ。七月二十日頃?彼の医師免許証を香港へ郵送。それを持ってダブリン[Dublin]へ飛んだ。三年後彼の地で医師免許証取得。香港で開業した。

 ECFMG試験には正直本当に驚いた・・・共産圏を除いて世界各国で春・秋一回ずつ一斉に行われ 台湾は台北市 沖縄は那覇市 日本は東京。
マルチ・チョイス式だとは知っていた。それ以外全く無知。ぶっつけ本番だった。インターン終了直後の人からかなりの年配者まで 講堂は受験者でいっぱい。日本語使用一切禁止。排尿希望者は挙手。便所まで係官がついてくる。日本人は居ない。筆記具は与えられた特殊なエンピツ?一本のみ。筆記試験問題は午前・午後それぞれ三時間(180分) 合計六時間(360分)。出題数360問。内科・外科・産婦人科・整形外科・小児科の問題が大半を占め15%位?基礎医学関係があった。チンプンカンプンが一問。薬理の問題だった。無論全文英語。試験問題小冊子をめくってもめくっても次から次へと設問が溢れ出てくる。全精力を集中して回答。午前・約10分 午後約20分弱のゆとり?があったが 読み返しチェックする気力全く無し。両手は汗でびっしょり。午前・午後のペーパー・テストの合間を縫って 三十分間の英語聴力テスト。
 マルチ・チョイス設問故 解答用紙に答えをエンピツでチェックすればいいだけなのだが これがなかなかの曲者だった。
例えば回答は全問についてa,b,c,d,e,の五個ある。aはbが正解 bはa+c cはd+e eはこの中に正解なし・・・なんて具合になっていた。ほんとに難しかった。しかも日本では殆ど御目にかかれないが 欧米ではありふれた疾患に関する問題がかなりあった。四分の一しか正答出来なかったと思い 悔しさとショックでしばし呆然自失。一年後に再挑戦を誓った。
因みに日本では1958年から1967年までに計20回実施。約2000人受験。合格率40%台。
 ところがびっくり摩訶不思議!。得点75% or betterでpermanentに来米OKと来た。海賊版セシル読みが功を奏した。
この年から①THE MERCK MANUAL その時 10th Editionを常時携帯 ②Current Diagnosis & Treatment / Lange Medical Publications 1st Edition購入 ③月刊誌Resident Physicians(USA・これは求人広告に注目)を読み始めた。②は2009年度にはLANGE CMDT2009/ Current Medical Diagnosis & Treatment 毎年改訂第48版として出てる。途中MARUZENから安価なアジア版の形で出ると同時に 日本語訳も出たが誤訳が多くいつの間にか消えた。最新の診断と治療を手っ取り早く知るのに利用。
 今はしばしば四〜五年間隔で昔のCMDTを並べ 同一疾患例えば急性膵炎とか肝炎に関する記述を読む。結果変ってない内容は何か?変ったものは如何に変ってるか?・・・調べるのを楽しんでいる。