地獄編〜55  この男奇人・「医者不足?」「威張るなっ!専門医」(34)

 巷では医者が足りないと大騒ぎ。果ては医学部新設・医学部定員を増やせ。これまともな論議か?そもそも「医者・医師」とは何ぞや?医師免許証を持ってる奴が医者なのか?。否。医師免許証は持ってるが病人なんて診たこともないのが幾らでも居る。例えば厚生省で書類ばかり見てる奴 保健所で印鑑ばかり捺してる奴 基礎医学部門で専ら癌やらインフルエンザ・ウイルスと格闘されてる方・・・。
 今や「患者さま」と言われる人々に問う。皆さんが足りない・医者不足だと仰る医者とは「いったいどんなお医者さんですか?」。
 実は医者は医者でもこんな医者が激増しつつある・・・例えば
僕・循環器「専門」・・・だから肺炎(呼吸器疾患)は診ない。
僕・神経内科医だけど「専門」は神経の変性疾患・・・だから脳梗塞(脳の血管障害)は診ない。
僕・腹部外科が「専門」・・・だから風邪は診ない。
私・精神科医だけど「専門」は思春期・・・だから大人は診ない。
僕・大腸カメラで大腸を診るのが「専門」・・・だからこれ以外の一般の病気は診ない・・・。
つまり むやみやたら「専門医?」「専門家?」が増えて自分が専門?としてる患者しか診ようとしない。実は専門家程楽をしている医者はいない。だって自分が得意としてる病気・疾患・患者しか診ないのだから。
こんなに守備範囲の狭い医者なんて一種のカタワで シェフではあるがスープだけ出来ると言ってるに等しい。次に専門家なんてどうせ長続きしない。すぐ後から次々優れた若手がのし上がってくる。専門家だと思っていたらいつの間にか二流・三流 終にはお前なんて要らないとなる。腹部外科だってテキパキ出来るのは五十二歳から五十五歳まで。後は高給ばかり取ってむしろ邪魔になる。
 こんな「専門医?」だらけの「総合病院」では何人医者が居たって「病人のための病院」になんか成れるわけがない。「縦割り行政」と全く同じだ。
 奇人と同じ年齢・女性。二十年前初診。その時体調不良九年目。その間病状激しくあわや家族崩壊かという時期もあった。東京都内の大病院六つ受診。各病院それぞれ全科受診。答えはみんな「異常なし」。しかも異口同音に「運動不足ですね」。実は彼女高名なモダン・バレーの師匠。「もう腹が立って腹が立って・・・医者なんて信用できないっ!」夫婦で家庭医学書を読み更年期障害と結論。ひたすら時が経つのを待った。ご主人の奇人受診をきっかけに拝診。軽い鬱状態。内服で忽ち劇的に軽快。このケースが象徴的なのは堂々たる六・大病院の全科で諸検査が行われ「異常なし」。こんな時は心の病に決ってる。「偉い」専門家?達による縦割り医療の「隙間」が大きすぎるのだ。
 これらチンケな専門医が逆に突如開業医になったらどうなるか?解りやすい例ひとつ。顔面神経の病気だけ診てた医者が 耳鼻咽喉科を標榜して開業した。どうなります?。